このお話は、クランクインされた現代と同じ時代から始まるんです。主人公が何代も何代も遡り、主従関係という武士道を貫き、死に果てていったご先祖さまたちの残酷悲劇を描いているんですね。戦国の世から綿々と仕えてきた信州の小藩の武士が、主君との主従関係を通して「忠義一筋」という命題が統一テーマになっています。それが明治に世が変わっても、昭和の大戦であっても、一環して忠義のために我が命を犠牲にしていくんですね。この作品を見るかぎり、お殿様の身勝手に憎しみを感じてきます。主君や一部の重臣以外の侍なんて、単に藩や主君を支えるための捨て駒でしかありません。
お殿様が馬で領内を走り。たまたま見かけた家臣の奥方がいて気にいったものなら、名前を聞いてその夜から「お城に上がり、お殿様をお慰みせよ」ですからかないません。家庭は崩壊し、そのあげく召された家臣の妻が、とこいり前に自害したという理由で、家族にまで惨い罪をきせますから許せません。たかが映画のストーリーにすぎないのですが、真剣に見ると製作者サイドの狙いにはまり込んでいってしまいます。
こんなお話なんて、数限りなくあったことでしょう。封建社会への非難も含め、「忠義」という言葉と家禄の比重を認識した作品でした。今の世の民主主義という有難さが、骨身にしみるようでした。