テレビの中継で、壊されたコウモリがあちこちに捨てられていたそうですね。ポイ捨てするマナーの悪さもいけませんが、やわいコウモリもよくありません。何本も買わされ、企業利益に貢献するだけですね。でも私のコウモリは丈夫でして、十年ほど前に、世田谷ボロ市で買ったものをまだ使っています。骨がしっかりしているんですね。あの強風でも持ちこたえたんです。いやあ、飽きることもなく長いこと使っています。そういえば、独身時代の昭和50年ごろ、大井町の傘屋さんで5000円ぐらいのコウモリを買ったことがありました。ブルーのラインがとてもおしゃれな、いいものでした。高級な傘を買ってしまったという思いがありましたが、それが金額に相応したしっかりしたいいものでした。やはりいいものを買うと大事に使うんですね。15年ぐらい使ったんですよ。もう家族みたいな煩悩が起きて、仕事先で置き忘れしたこともありましたが、電車とタクシーを使ってまでも取りに行ったことがありました。濃霧漂う大ロンドンで、伝統的な英国紳士たちも、自分の傘を大事になさっていたことでしょう。
あんなコウモリ傘なんてその都度手軽に使えばそれでいいのですが、かわいがりたくなるような物ならなおいいですよね。どんなものでも、ちょっと高めの高級品を使い、ニックネームをつけるのもいいかもしれません。自分だけのかわいい宝物にかこまれれば、それもいい日常生活じゃないでしょうか。そんなふうにふと思ったものですから。